治療
過敏性腸症候群は長期にわたって症状が持続し、残念ながら完治することのあまりない病気です。
したがって治療にあたっては、症状を緩和することで病気とうまく付き合っていくことの必要性に対する理解が大切です。
そのためには、食事療法や運動療法といった生活習慣の改善指導によって長期的な観点から治療を受けることが重要になります。
その生活習慣指導においては、生活の不規則さや疲労の蓄積、精神的な抑圧などストレスをもたらしていると考えられる環境があれば、その改善にいそしみます。また、食事療法としてコーヒー、アルコール、脂っこい食べ物、刺激物などの過剰摂取を避け、こまめな水分補給、食物繊維や乳酸菌を多く含む食べ物の摂取を心がけます。
加えて、運動療法として体操や散歩といった適度な運動を習慣づけることで、気分転換やストレス発散を兼ねながら腸の働きを整えます。
一方、生活習慣の指導だけでは十分な効果が得られなかった場合には、症状に応じた薬を服用する薬物療法が用いられます。
処方されることの多い主な薬には、便に含まれる水分量を調整して排便しやすい固さをもたらす高分子重合体、消化管の動きを調節する消化管運動調節薬、腸内の乳酸菌を増やす乳酸菌製剤などが挙げられます。
加えて、下痢型には腸の運動異常や痛みを抑えるセロトニン受容体拮抗薬が、便秘型には腸の運動を活発にして便を軟らかくする下剤がそれぞれ処方されることもあります。
また、こうした薬だけでは十分な効果が得られなかった場合には、抗不安薬や抗うつ薬の処方が検討されることもあります。